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【テーオーロイヤル】
筆者は長距離レースが好きだ。
国内においても世界においても3000m超の長距離レースの存在感は薄れつつあるが、長距離であるがゆえのヒリつくような緊張感はたまらない。どこでどの馬が、どの騎手が動くのかといった駆け引きも面白いし、そうした心身ともにタフさを要求される道中を乗り切った後の直線の攻防、これもまた美しい。菊花賞や天皇賞(春)の距離を変更すべきだという声も多いが、個人的にはずっとこのままの条件設定であって欲しいと思う。
だが、そうした特殊な条件である分、2000mや2400mの王道レースとは出走馬の顔ぶれも違うし、輝きを放つ馬の質もまた違う。
今回取り上げるテーオーロイヤルは、正にそうした存在だろう。一昨年の当レースにおいてタイトルホルダー、ディープボンドに次ぐ3着という実績があり、紆余曲折あってから復調を果たしたここ3戦はステイヤーズS、ダイヤモンドS、阪神大賞典という超長距離ローテを歩んでいずれも好走。ステイヤーとしては文句の付けようがない実績を引っ提げ、再度この大舞台に戻ってきた。特に前走の阪神大賞典における5馬身差圧勝はインパクトが強く、ここでも人気の一角を担うことになりそうだが、念願のG1タイトル獲得はなるのだろうか。いつも通りに各要素から掘り下げていきたい。
まず指数面だが、実績が示す通り3000mを超えるレースにおける高指数が目立つ……のだが、意外にもそこまで抜けた数字というわけではない。挑むレースがG1ということを考えると、少々物足りないレベルと言ってもいいくらいだ。
前走の阪神大賞典にしても、過去の同レースの結果と比べると真ん中くらいのレベル。近10年の間に、このレースをステップに本番も勝ったという馬は、2023年のジャスティンパレス、2018年のレインボーライン、2015年のゴールドシップと3頭いるが、彼らと比較すると数字的には遥かに下回る。実際のレースも、道中でインをぴったりと回ってきた本馬とワープスピードがワンツーを決めるという、ロスのない立ち回りが勝負を分けたレースという印象があり、圧勝という結果を素直に高評価していいのか、非常に悩むところだ。
とは言え、刻んだラップは極めて優秀。タフな距離を走れば当然ゴールに近づくにつれてラップは落ちていくものだが、本馬はラップを落とさず、それどころか最後まで加速し続けて勝った。これはまだ伸びしろがある証拠だし、本番ではさらに距離が200m延びることを考えると、かなり強力な好材料だ。少なくとも長距離適性という点においてはメンバー上位なのは間違いない。
が、本馬の最大の壁はこの”高すぎる長距離適性”にあると筆者は考えている。
過去の当レースの勝ち馬の名前を並べて見てみると、ステイヤー気質の強さを持ちながら、同時に2000~2500mでもG1級の走りを見せたことのある馬がほとんどなのだ。
指数的に見た場合、本馬は3000mより短い距離のレースでは”普通のオープン馬レベル”にまで下がってしまっており、総合力というよりは適性だけで上位に来ているという印象が強い。この点において、過去の勝ち馬や、今回上位人気を争うであろうドゥレッツァやタスティエーラとは大きくイメージが異なる。3200mという距離ならば馬券圏内は十分に狙えるだろうが、”G1を勝つ”という域に至るには、何かが足りないように思えてならないのだ。
ただ、血統はその足りないピースを埋める可能性を秘めている。
本馬の半兄メイショウハリオはダートの一線級で活躍している馬だが、6歳になってかしわ記念、帝王賞とG1連勝を決めているし、本馬と同じく長距離戦で活躍した近親メイショウカドマツも、最もレベルの高い走りを見せていたのは6歳のシーズンだった。4~5歳でピークを迎える血統よりも若干完成は遅い印象で、本馬も6歳の今年でブレイクを果たす可能性はあるだろう。この短期間でどれだけ総合力を押し上げられるかが鍵となる。
調教面ではこれまでと大きく変わりないメニューで、順調に調整が続けられている様子。
追い切りで良く見せるタイプの馬ではないため、分かりやすく見栄えのいい時計を刻む馬と比べると地味に映るが、これまでもそうした内容で結果を出しているだけに、大きな心配はいらないか。負担の大きそうな長距離レースで連戦してきていることもあり、平行線の状態で臨むことができれば合格点だろう。
どのレースにおいても、予想の後に馬券の買い目を組み立てることになるが、その馬が”勝つのか、勝てないか”というのはかなり重要な分かれ目。それ次第で選択する券種も大きく変わってくるからだ。文面からもお察しいただける通り、筆者は現状本馬が”勝つ”ことに対しては半信半疑だが、”好走”の可能性は高いと考える立場。
果たして全国の予想上手の皆さんが、本馬に対してどんな評価を下し、どんな馬券が売れるのか。そして、実際に本馬がどんな走りを見せるのか。長距離戦の醍醐味を十分に味わいながら、その先にある答え合わせを楽しみにしたい。
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