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改めて、レースは生き物だと実感させられる結果だった。
特に天皇賞(春)や菊花賞のような長距離レースは、メンバー、展開、馬場傾向などによって大きく性格を変える。時には中距離的な要素を問われるスピード決着になり、時には真のステイヤーでないと残れないスタミナ決着になる。どちらに振れるかはゲートが開いてみないと分からず、予想する上での入口でありながら、非常に難しい要素だ。
結論から言えば、今年は明らかに後者の年だった。
序盤でハナを切ったマテンロウレオは、前半で複数回11秒台のラップを刻み、締まった流れを形成。
中盤は多少緩んだ流れになったものの、残り800m地点から、スタミナに任せてディープボンド、サヴォーナ、テーオーロイヤルらが進撃を開始。逃げていたマテンロウレオや、序盤から力み気味に好位に付けていたドゥレッツァはこれに抵抗できず、終始抜群の手応えで進めたテーオーロイヤルがそのまま余裕を持っての押し切り勝ち。2着ブローザホーン、3着ディープボンドはもちろん、4着スマートファントム、5着ワープスピード、6着サヴォーナと、"ステイヤーらしさ"を色濃く持った馬たちが上位を独占する結果となった。
勝ったテーオーロイヤルは、ダイヤモンドS、阪神大賞典に続き、3000m級のレースを3連勝。懸念されていた"目に見えない疲れ"も全く感じさせず、名実共に国内最強ステイヤーの座に就いた。
今回の流れは、本馬含め前に付けていた組にとっては決して楽なものではなく、少しスタミナがあるくらいでは直線の攻防に加わることすらできなかったはず。道中スローの切れ味勝負といった中距離的な質のレースにならずに、強靭なスタミナがダイレクトに生きるレースになったのは、本馬にとって非常に大きな勝因の一つだろう。
G1馬の称号を得たことで、距離短縮も含めた選択肢が生まれてきたが、陣営が明言した目標は、豪州の大レース・メルボルンC。ステイヤーとしての選択肢が国内に少ないのは時代の流れもあり仕方のないところだが、そんな中で生まれたこの超絶ステイヤーが自分を貫いてどこまで行けるのか。さらなる躍進を期待したいところだ。
2着のブローザホーンは終始掛かり倒した阪神大賞典から巻き返しての好走。序盤こそ力む挙動は見せたが、全体的には前走よりも遥かにスムーズなレース運びに映った。
ロスが大きい中でも伸びた前走、最後勝ち馬に迫る脚を見せた今回と、この馬も優れたステイヤーの資質を十分に示しているが、昨年には2000m戦にも対応しているように、こなす距離の幅が広いのも魅力。選択肢の広さならば勝ち馬以上なのは間違いなく、今後の進路に注目が集まる。
3着のディープボンドは近走の不振や衰え・限界説を全て吹き飛ばす魂の快走。序盤から終盤まで常に攻める姿勢で動いたことが、自身の良さを引き出すことにも繋がった。
勝負所でズブいというイメージの強い馬だが、京都コースにおいてはこの個性が薄れて比較的スムーズに動いており、舞台適性の高さも生きた印象。勝ち馬には完敗と言える着差で、全盛期のパフォーマンスを望むのはさすがに酷だが、長丁場ではまだまだ無視できぬ存在であり続けそうだ。
一方、人気を集めていた菊花賞馬ドゥレッツァと、ダービー馬タスティエーラは見せ場を作れず敗退。4歳世代の実績上位馬が共に大きく崩れる結果となってしまった。
ドゥレッツァは菊花賞時と比べると、序盤からかなりの力みを感じさせる走り。流れの厳しさをまともに受ける位置だったこともあり、失速は仕方のないところか。
とは言えブービー15着という結果はあまりにも負け過ぎな印象で、レース後に発表があった通り、熱中症の影響も大きかったのだろう。本質的な長距離適性に関しては謎が残ってしまったが、総合能力は依然国内最強を争えるだけのものを持つ馬。しっかりと立て直して、万全の状態でのリベンジを期待したい。
タスティエーラは道中の折り合いも比較的スムーズで、インでじっとできた時間も長く、ロスの少ない競馬が叶ったものの、直線で一瞬脚を使ったのみ。最後は明らかに失速していた。
前走の大阪杯では輸送後にカイ喰いが悪くなっての馬体減が見られたが、今回はそこからさらに6kg減。3走前の有馬記念時がやや太めだったため、単純に絞れたものと見ることもできるが、実戦に行って大きく変わらなかったのは気がかりだ。
それでも明らかにおかしな挙動だった大阪杯に比べれば動けてはいただけに、体調の問題というよりはステイヤー向きの舞台や展開が合わなかったと見るべきか。
思えば、父のサトノクラウンもクラシック好走後に迷走した時期があった馬だった。本馬も同じ蹄跡をなぞるとすれば、今秋から来年にかけて再度化ける可能性がある。ドゥレッツァと共に、4歳世代の意地を示す復活を心待ちにしたいところだ。
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