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【ドバイワールドカップデー2023】レース展望①ドバイの光と深い影

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【ドバイワールドカップデー2023】レース展望①ドバイの光と深い影 | コラム | ウマニティ

ウマニティ会員の皆さん、お久しぶりです。甘粕代三です。ドバイに向かうエチオピアはアジスアベバ空港ラウンジで小稿を叩いています。ドバイは昨年のワールドカップ以来1年ぶりになりますが、胸の中は期待と不安に二分されています。期待は勿論27頭と史上最多の出走馬を数えた日本勢の活躍であることは言を俟ちません。

さて、不安です。皆さんはエルドラド金満ドバイのどこに不安などあろうか、とお思いかもしれません。しかしコロナ禍中の昨年、3年ぶりにドバイを訪れてその豹変、いや衰退ぶりに腰を抜かしたのです。ドバイと言えば世界一高く、そして世界一高価なホテル、ブルジュハリファに代表される砂漠の中のガラス張り高楼大厦が林立しています。そのガラスは砂嵐の中でも常に磨かれたように陽光を反射させ、眩しいほどでした。しかし、3年ぶりに昨年見た高楼大厦は光を失い、砂埃に煙っていたのです。

産油量が僅少のドバイは首長シェイク・モハメドの号令一下、観光と金融で立国し繁栄を築き上げてきました。これまでも金融危機に襲われながらシェイクの逞しい指導力で克服してきたのですが、コロナの猛威は凄まじいもので、ドバイに蝟集した世界中の金満家は途絶え、立国の二本柱の一本、観光は大打撃を受けました。また、上客中の乗客だったロシアのオリガルヒは昨年1月に勃発したロシア・ウクライナ戦争によって全く姿を消したのです。
観光と金融で繁栄を築き、エルドラド、ドバイに出稼ぎにきたアジア、中近東、アフリカの安価な労働力によって砂中の高楼大厦は日に何度も磨かれ、その光を保っていたのですが、コロナ禍とロシア・ウクライナ戦争はその安価な労働力をも維持できなくなったのです。

龍宮城もかくや、と眩しいばかりに輝いていたメイダン競馬場も例外ではありませんでした。砂埃に煙っていたばかりか、親交を結んでいた競馬開催のプロフェッショナル、お雇い外国人は一人としていなくなっていたのです。今や世界最高賞金の座をドバイ、ペガサスワールドカップから奪ったサウジアラビア、これを追いかけるカタールに高額の待遇で引き抜かれてしまったのです。

メイダン競馬場に隣接して6つ星ホテルと言われたメイダンホテルにはコロナ禍以前は世界のトップオーナー、トレーナー、ジョッキーが蝟集して宿泊。ここを訪れればありとあらゆる情報を手にすることが出来ました。しかし、昨年のメイダンホテルは僅かな部屋から照明が漏れるだけで開店休業状態。日本から駆け付けた某大オーナーも我々プレス用のホテルと棟続きで名ばかりの5つ星に宿泊していました。

ホテルマン、レストランのお給仕と折を見ておしゃべりしました。彼らは口を揃えてドバイは弱り目に祟り目、コロナ禍とロシア・ウクライナ戦争で財布の底が見え、あのシェイク・モハメドが幾度も隣接する兄弟首長国、アブダビを訪れて金策の相談をしている、とか。これが事実かどうか証明する術もありませんが、ドバイの巷間ではこうした危機が呟かれ続けていることは疑いようもない事実です。

さて、昨年のドバイワールドカップデーでは日本勢が5勝と史上最強の大活躍を見せました。これは日本馬の実力強化の結果であることに何の疑問も差し挟む心算はありません。しかし、競馬は相手あってのもの。昨年の結果をもう一度見てみれば、あの突き抜けるような青空の勝負服が質量ともに以前のようではなくなっていることがお分かりになるか、と思います。欧米豪の競馬関係者からシェイク・モハメドの競馬大本営、ゴドルフィンは大丈夫なのか、という不安の声が届きます。各地のセリで高額の取引がなく、大レースでの活躍もめっきりと減っている。日本のゴドルフィン=ダーレー・ジャパンはどうなっているのか? ドバイ自身は今どうなっているのか? そして今後はどうなるのか?

聞くところによれば皇太子は競馬に全く興味がなく、シェイク・モハメドに一旦緩急あればドバイの競馬は終わらざるを得ないだろう、との観測も漏れ聞こえてきます。
このあと数時間後にはドバイ空港に到着。高楼大厦は今年も砂塵にまみれているのか、それとも昔日の輝きを取り戻しているのか――そこからも今年のドバイワールドカップデーにおける日本勢の活躍が推し量れるかもしれません。

さて、明日から早朝の調教をじっくりと確認し、日本で発売される4レースの展望をお届け致します。本音を言わせて貰えるなら、自分の勝負レースは日本では発売されないUAEダービー(笑)。日本馬が出走するのに発売されないレースがあるなんでおかしいと思いませんか? どこで買うって? それは勿論香港です。香港に立ち寄って友人に馬券代託してきましたから。


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、香港アップルデイリー日本特約記者、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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